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  『ポー研究』13 号「特集論文」募集のお知らせ  (2020-07-12更新) new

 『ポー研究』13 号(奥付で2021 年3 月末発行)は、従来の自由テーマでの投稿論文に 加え、特集論文を掲載する予定です。テーマは「ポーと人種問題」または「ポーとパンデミック」。いずれもポー文学と密接に関わる重要かつ「今日的」なテーマです。会員の皆さまには、下記の趣旨をお読みいただき、奮ってご応募くださいますようお願いいたしま す。

1.各テーマの趣旨について
[ポーと人種問題]
 ハリー・レヴィンがアメリカン・ルネッサンスにおける黒人の意義を説いた名著『闇の力』 The Power of Blackness (1958) を出してから、すでに 60 年以上が経つ。南北戦争以前の アメリカにおいて、黒人奴隷制が南部貴族主義社会の重要な根幹を成したのは自明だが、 全く同時に1831 年にはヴァージニア州においてナット・ターナーの反乱が起こり、老若男 女問わず 57 名もの白人が惨殺され、同時代のアメリカ文学において恐怖の対象としても多 様に表現されてきた。それは、まさにポーにとっても例外ではない。「モルグ街の殺人」「タール博士とフェザー教授の療法」から「ホップフロッグ」に及ぶ作品群はその最大の証左であろう。そして唯一の長編『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの体験記』においては、白人とインディアンの混血のダーク・ピーターズを登場させている。新歴史主義批評以降には、様々な物証と共に、ポーは南部作家としての意識を抱くが故に黒人奴隷制肯 定論者だったという解釈が広まった。
 しかし全く同時に、ポーがヤング・アメリカ運動に接近し、真に民主主義的なアメリカ文学の確立を理想としていたこともまた、事実である。ではポーは人種についていったいどの ように捉えていたのか? 彼は本当に保守的な人種観を持つ南部作家にすぎないのか?
 Black Lives Matter 運動が高揚し「南北戦争以前」“antebellum”という単語すら人種的 不平等の歴史を想起させるため抹消されかねない昨今において、新たな見地より時代の寵 児の作品を読み直すことは、21 世紀のポー研究をさらに一歩進めることになるだろう。 (巽孝之)


[ポーとパンデミック]
 新型コロナウイルス (COVID-19) による米国の死者数は、世界最悪の12万人超に上り、 これは第一次世界大戦の約11 万人を超え、まさにアメリカではCorona War となっている。 世界各地の文化と人の移動で始まったアメリカの歴史は、まさに移動してくる疫病との闘 いの連続でもあった。
 世界の終末と災厄による人類の死に深い関心を寄せていたポーは、疫病を繰り返しテーマ化し傑作を残した。その特質は他のジャンル同様アメリカ大陸だけにとどまらない点にある。「影」は、古代から人類を苦しめた「疫病が黒い翼を広げた」Greco-Roman 文明のエジプトが舞台。「ペスト王」は、中世のロンドンの港町。ヨーロッパのペストの大流行では、人口の 3 分の 1 以上が失われたとされる史実から、ペスト患者と死者を投げ捨てた街の立 ち入り禁止区域に、酔って気のふれた妙な水夫2 人が累々たる死骸の街に迷い込む話。
 ペストは皮膚が黒くなる症状から「黒死病(The Black Death)」と恐れられ、黄熱病な どから名作「赤死病の仮面」が生まれ出た。ポーの疫病譚の完成形ともいえるこの傑作は、様々なテーマと結合しているが、ポーがボルティモアで実際に経験したコレラの流行が直 接の素材であろうと考えられ、ポーの生きた 19 世紀初頭から中葉には、1831 年にヨーロ ッパで大流行し、32 年全米を襲った。ポーはそのころボルティモアで、直接疫病に倒れる 人々や街の惨状も目撃したに違いない。現在われわれは COVID-19 による死者が、家族と の別れも許されずひっそりと焼かれるのを目にしているが、ポーの作品では死者が谷間に蠢いたり、ぺスト地区に捨てられたり、「赤死病の仮面」のように病の城下町から自らを隔離し、閂で閉鎖した広壮な城内で、赤死病という魔物に感染して全滅する。ニューヨークで 書いたもう一つの疫病譚「スフィンクス」も含蓄がある。
 最近の研究では、これ以外にも疫病モチーフはポーの多くの作品を形成していることが 判明している。またアメリカでは “Poe and Pandemics” でポー学者が雑誌や新聞に論文を 投稿し、『ペスト』のカミュとともにポーが今再度流行作家になっている。COVID-19 です べてが変わり階級格差が露わになり大学も学会も閉鎖されるという前例のない世界に突入している今の我々は、ポーを再読し、ポーとパンデミックについてその意義を再考する絶好 の機会ではないだろうか。 (伊藤詔子)

2.書式等について 論文の書式は『ポー研究』に記載された「投稿規程」に準じます。ただし、論文の長さに ついては、日本語による論文は400 字原稿用紙換算で30 枚以内、英文の場合は6000語以 内とします。引用、注釈、スペースも、規定の枚数・語数に含まれます。また日本語論文に 英語による要旨を付す必要はありません。原稿締切は、2021年1月7日とします。その他 の事項 [原稿送付先・採否等]につきましては、すべて「投稿規程」をご参照ください。

日本ポー学会 編集委員会